1930年代の古き良きアメリカを感じることのできるホットロッドの魅力とは?

アメリカの車文化を説明する上でなくてはならないポイントとなるワードが「ホットロッド(hotrod)」ではないでしょうか。しかしながらフレーズは分かっていても条件を満たす定義や歴史を熟知している人は少数であるのは間違いない事です。そういう訳で「そもそもホットロッドというのはなんだろう?」を深掘りしてみましょう。

ホットロッドの発祥は1930年代終盤の南カリフォルニア

「ホットロッド」と呼称されるフレーズが出てくるのは、1930年代終盤の南カリフォルニアであるのが通説です。市販車をベースにしてハイスピードに走ることを狙った改造を行なった車両でスピードを競ったというのがルーツで。一段と軽量な「ロードスター」(オープンカーの意)をベースにして改造した車両「ホット・ロードスター(HOT ROADSTER)」が言葉の由来なのであるという説や、競争相手以上にハイスピードに走る目的で高回転となったエンジン内部にある「コネクティングロッド」が焼ける様にヒートアップすると言う表現より「HOT ROD」と呼称される言葉が誕生したといった説等が有力と考えられます。
出現当時は幾らかは資金力のある自動車マニアが主体とされていた「ホットロッド」カルチャーは、第二次世界大戦後に急な勢いで変貌を遂げます。戦地より引きあげて来た復員兵達が、もはや10年近い旧式モデルに変わってリーズナブルで手に入れやすかった1930年代のフォード等といった車両をベースにして、軽量化の為フェンダーなどを外し、最新鋭のエンジンを積み込んだ改造車を組み立てスピードを競うこととなり、軍隊経験において航空機技術というものを得ていた彼らの中には、速く走る為に必要なパーツを開発する者も登場し、街中で400mをいかに速く走り抜けるかを競うイリーガルな「ドラッグレース」も実施される様になりました。更にスピードが100マイル(160km/h)に及ぶと、一段と平坦な砂漠地帯の塩湖の湖面を使って、レースにチャレンジするようになっていくのです。
またホットロッドのカスタムに関する詳しい世界観について参考になるブログがあるのでご興味のある方は是非どうぞ。

あなたも知れば魅力の虜? ホットロッドのカスタムの世界

厳しい取り締まりを回避し活躍の場はストリートからレース場へ

ホットロッドの文化は、段階的にそのレベルアップしていくのと並行して、街中でのレースは危ない行為ということで厳しく取り締まられる結果に繋がります。けれどもこのタイミングで文化が潰えてしまわないのがアメリカの自動車大国たる所以なのです。
さっそく1937年に、塩湖で最高速を競い合うスピードトライアルは、「SCTA(Southern California Timing Association)」という名の競技組織が発足し、その地域のカークラブを主体として活動をスタート。戦後直ちにレギュレーション等が細部に亘って定められ、レース競技へと昇華して行ったのです。 という反面1/4マイルをスピードを競り合うストリートを利用してのイリーガルなドラッグレースも、1951年に「NHRA(National Hot Rod Association)」が設立。全米でドラッグレースがモータースポーツという形で合法的に存続することとなったのであります。そういった背景からホットロッドは市民権を獲得して、格段と広い世代に認知されるようになると同じように、アメリカの自動車文化を言いあらわす上で欠かすことが無理な要素と考えられていきます。

ナンバー付きにこだわりを持ってストリートに残存するHOT RODまで

勿論レース場にステージを移す事を拒否した者もいたようです。彼らは意図的にナンバー付のストリートカーでスピードを競う状況にこだわりを持ち、頑なにイリーガルなドラッグレースを行なっていたのです。1950年代後半より60年代がくると、アメリカの自動車はその好景気に圧されて巨大化し、絢爛華麗を極める結果となるのです。そう言ったラグジュアリーな最新式の車に、外見上はポンコツな改造車がストリートのシグナルレースで後塵を浴びせる様子に、大勢のスピードフリーク達が憧れを抱いたのです。
この時代のカスタマイズカー事情は、ジョージ・ルーカス監督でマイナー時代のハリソン・フォードが黄色い1932年型フォードのホットロッドに乗るボブを演技し、1962年その当時のカリフォルニアを描いた映画「アメリカン・グラフィティ」が詳しいですから、見たことのない人は是非とも参考にしてください。

スピード以上に容姿を競う様に変化したホットロッド派生系達

ここまで見てきた様に、狭義に於いての「ホットロッド」は1930年代の車両をベースにして、ハイスピードに走ることを目論んだ改造が施された車両を指し示すのです。しかしながら不必要な物を外し、可能な限りスピードを求めたホットロッドのスタイルに、美を見い出すユーザーも発生して、ホットロッドのスタイリングをテーマにカスタムカー・ビルダーが制作したショーカーが沢山作り上げられる結果に繋がります。以後にビレットホイール製造で日本においてもその呼び方が認知される結果となる「BOYD(ボイド)」も、カーショーをターゲットにしたホットロッド製作を手がけた専門ショップの一つなのです。
カーショーを目的としてドレスアップを行なった車両はオリジナルの「ホットロッド」の主旨にそぐわない面も結構多いのだが、時代に追随して定義は拡大解釈される状態になって、様々な派生系が作り出される事になります。。元来ハイスピードに走行することを狙って生み出されたホットロッドを街乗りで居心地良く乗る為に、より現代的なサスペンションといった最新装備とかエアコンなどといった快適装備を備えた「ストリートロッド(STREET ROD)」と呼称されるスタイルもそういった派生系の1つです。
併せてベース車両も1930年代の車両に限定されることなく、1950年代ごろ迄の幅広いモデルをベースとする車両も「ホットロッド」と呼称されることになっていきました。このようにして元来の意味からはかけ離れてしまいながらも、ホットロッドと称されるキーワードは半世紀を過ぎた今になっても残っているのです。